目次
そのオリーブオイルは偽物です
なぜ偽物が出回るのか
本物のエキストラバージンとは?
偽物エキストラバージンの手口
本物のエキストラバージンオリーブオイルの選び方
そのオリーブオイルは偽物です
こんにちは!テゾーロ・ディ・イタリアの英亜紗里と申します。イタリアの友人家から良質なエキストラバージンオリーブオイルを輸入販売しております。
「そのオリーブオイルは偽物です」という衝撃的なタイトルの本を出版されているのは私ではありません。日本オリーブオイルソムリエ協会、理事長の多田俊哉さんです。
この本で著者、多田俊哉さんがおっしゃっている内容、そして私が実際にイタリアのオリーブ農家で経験したことをもとにこの記事を書かせていただきました。
ちなみにこの記事にまとめた内容はYouTubeビデオにもまとめてありますのでビデオをお好
みの方はこちらをご覧ください!(^_^)
本物の「エキストラバージン」はたったの20%
以下の図は本からの抜粋です。棒グラフの黒い部分がエキストラバージンオリーブオイルの輸出入の量を示しています。
スペイン・イタリアが輸出しているエキストラバージンの量と我々主要輸入国が輸入しているエキストラバージンの量が明らかに一致しません。
出典:そのオリーブオイルは偽物です 多田俊哉(著)
つまり何らかの方法でエキストラバージンではないオリーブオイルがエキストラバージンに変身して店頭に並んでいることになります。
最大生産国のスペインで作られるオリーブオイルのうち、実際にエキストラバージン規格に該当するものはたった20%程度しかないとしています。またトム・ミューラーは近著「エキストラバージンの嘘と真実」(実川元子訳・日経BP社刊)でイタリア最大産地プーリア州の生産者の話として、真にエキストラバージンと言えるのは全体の2%しかないと明かしています。
出典:そのオリーブオイルは偽物です 多田俊哉(著)
素晴らしい健康機能をもつ本物のエキストラバージンオリーブオイルとはとても貴重なものなのです。私は2018年にイタリアのオリーブ農家で一年間暮らしていました。彼らもよく言っていました。本当に質の良いエキストラバージンオリーブオイルは簡単には手に入らないと。
なぜ偽物のエキストラバージンが出回るのか?
最大の原因はオリーブオイル業界独特の複雑な流通構造
自らの畑で取れたオリーブを使って搾る少数の生産者たちを除けば、大量につくられ流通しているオリーブオイルはオリーブ農家、搾油業者、オリーブオイルブローカー、ボトル詰め業者、そして販売者という分業体制が確立しています。
その結果、農家や搾油業者は自分が生産したオリーブやオリーブオイルが世界のどこで、どういったブランドや等級を付けて販売されているかは全く知らないという状況が生まれているのです。
消費者の立場から見ると、こうした大量生産されたオリーブオイルについてはどこで育ったオリーブが使われ、どこで搾油されたかを調べる手立てはほとんどないと言っていいでしょう。
出典:そのオリーブオイルは偽物です 多田俊哉(著)
こちらの動画はイタリア、トスカーナの港に大きなコンテナで運ばれてくるオリーブオイルです。大きなトラックが100台近く、チュニジア、ポルトガルから送られてきたときの様子です。これらのオリーブオイルはイタリア産のラベルを付けて販売されることになります。
「簡単に儲けることができるから」
健康被害などの大きなスキャンダルをださずに大儲けができるビジネス、それがエキストラバージンの偽装なのだそうです。
しかし当然ながら偽装されているエキストラバージンには本来含まれているはずの高い栄養価は期待できません。
最近私が会った農業マフィアの一人も「オリーブオイルの偽装や不正は、マフィアにとっても麻薬のようなリスクがないからとてもやりやすかった」と語る通り、たやすく工作を行うことができて、しかも偽装が行われたかどうかは商品やそのラベルを見ても判別することは一切できません。
出典:そのオリーブオイルは偽物です 多田俊哉(著)
本物のエキストラバージンオリーブオイルとは
一体どのようなものなのか?
オリーブオイルといえば、通常は生の新鮮なオリーブ果実から物理的な機械的処理(粉砕や圧搾、遠心分離)のみでオイルを取り出して作られるバージンオリーブオイルのことを指します。つまりオリーブの実からできた100%のジュースなのです。製造の過程で化学溶剤や精製処理などがされているものはバージンオリーブオイルとは呼べません。
そのバージンオリーブオイルの中にさらに細かい等級がありその最高グレードが「エキストラバージンオリーブオイル」となります。
出典:ウィキペディア
酸度(%)+人による風味官能検査によってきめられる品質等級
上の図にある「酸度(%)」というものは搾る前のオリーブ果実がどれだけ新鮮であったかを示す指標になります。この酸度が低ければ低いほど新鮮で酸化しにくいオリーブオイルになります。通常オリーブの収穫後、最低でも12時間以内に搾油をおこなわなければ酸度0.8%以下のオイルを作ることはできないといわれています。
さらに酸度の指標だけではなく実際に人によって風味や味を鑑定されます。
酸度が0.8%以下であること、そして風味・味に申し分がないものがエキストラバージンの等級を得ることができます。
日本には「エキストラバージン」に関する法規定は何もない!
かろうじてJAS法(日本農林規格)と言われる規格でかなり緩いオリーブオイルの品質規定があることはあるのですが、「エキストラバージン」と表示することには何の規制もありません。言ってみれば、どんなにひどい品質のオリーブオイルであっても、日本ではラベルに「エキストラバージン」と書いて何のおとがめもありません。
出典:そのオリーブオイルは偽物です 多田俊哉(著)
偽装エキストラバージンの手口
アップグレード偽装
低いグレードのオリーブオイルにも関わらず高品質を偽ってラベルに表示して販売するケースです。または本物のエキストラバージンに精製した低級のオリーブオイルを混ぜて水増しをして販売するケースもあります。
オリーブの実はとても繊細で放っておくと発酵が進みカビが生えてしまいます。
(右の写真)
そしてこのような発酵が進んだオリーブの実を絞ってできたオリーブオイルは酸度が高く質の悪いものとなります。このような低級のオリーブオイルは精製され、本物のエキストラバージンに混ぜる水増しの材料になることがあります。
また下の写真のように搾る工程や搾ったオイルの保管でも、少しでも手を抜くと質の悪いオイルが出来上がってしまいます。
出典:そのオリーブオイルは偽物です 多田俊哉(著)
本物のエキストラバージンの選び方
皆様をがっかりさせるかもしれませんが、オリーブオイルの専門家でもボトルだけを見て中身のオイルの品質を判定することはできません。
最も確実な方法はオリーブオイル生産者から直接買う事です。
私はイタリアに行く前はこのようなオリーブオイル業界の複雑さや不公平さを全く知りませんでした。オリーブオイルに興味があったわけでもありません。
しかし現状では良心なオリーブオイル農家がつくる良質なエキストラバージンオリーブオイルは全く保護を受けておらず単に価格のみで戦わなければいけません。彼らの苦労は報われず、良心の生産者がどんどんいなくなってしまうことを私たち消費者は本当に危惧しなければなりません。
そのような経緯があり、現在は2018年にお世話になったイタリア、ウンブリア州にある小さなオリーブ農家から良質なエキストラバージンオリーブオイルを輸入販売しております。彼らとは2015年からの付き合いがありもちろん100%本物のエキストラバージンを生産しています。600本しかオリーブの木がないので主人のジャンカルロは隅々まで細かくオリーブの木の状態を把握しています。牛の糞だけを肥料にした無農薬栽培のエキストラバージンオリーブオイルです。
小規模農家であり、小規模な生産体制であること、またオイルの品質を維持するため飛行機を使って輸入を行っているので少しお値段が高くなっていますが健康のために摂取するなら他のどのオリーブオイルよりも自信を持って当社のエキストラバージンをお勧めいたします。
またイタリアの生産者、ヌンツィ家では小さな民宿を経営しています。現在はコロナウィルスの影響で現地へはいけませんが、今後はイタリアへの生産者を訪問するツアーなども考えております。
最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます。
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